2026年10月1日

家族信託の建物を解体するときは?信託契約と発注者を確認する準備

家族信託の建物を解体する前は、受託者の名前だけでなく、信託の目的・契約内容・対象財産を確認しましょう。解体ができる権限、必要な同意、費用の扱いを専門家と整理し、その内容に合った工事見積りを用意します。「家族の名義になっているから自由に壊せる」とは判断しません。

この記事は、すでに信託されている建物の話です

家族信託は、信頼する家族等に財産の管理を託す民事信託の形として使われる呼び方です。建物が古くなった、住む人がいなくなった、土地の使い方を変えたい。こうした場面で、信託の対象の建物を取り壊すことを検討する場合があります。

ここでは、新たに信託契約を作る方法ではなく、既存の契約のもとで解体の準備を進める確認点を説明します。家族が日常の管理をしているだけの場合と、法的な信託が設定されている場合は分けて考えてください。

最初に知っておきたい用語

  • 委託者:財産を託し、信託を設定する人です。
  • 受託者:託された財産を、信託の目的に従って管理・処分する人です。
  • 受益者:信託による利益を受ける人です。委託者と同じ人の場合もあります。
  • 信託財産:信託の対象となる財産です。受託者個人の財産とは分けて扱います。
  • 信託契約書:信託の目的、対象、権限、管理方法等を定める契約書です。変更書面がある場合も確認します。
  • 信託目録:不動産の信託に関する登記内容を確認するための資料です。通常の所有者名の確認だけで終わらせないことが大切です。

受託者なら、どんな解体でも決められる?

信託法第26条は、受託者に、信託財産の管理・処分など信託の目的を達成するために必要な行為をする権限を認めています。一方で、信託行為によって権限を制限することもできると定めています。つまり、法の一般的な規定だけでなく、その信託の具体的な内容を見る必要があります。

例えば「住まいとして維持すること」が重視されている契約と、売却等も想定した契約では、解体を検討する際の論点が異なります。契約の一部分だけを読んで「管理に含まれるはず」と自己判断せず、目的や制限、同意の条件をまとめて専門家に確認してもらいましょう。

なぜ契約書と登記の両方をそろえるの?

契約書に記載された対象と、現地で撤去したい物が一致しているかを確かめるためです。土地だけが信託されているのか、建物も対象か、敷地内の物置まで含まれるかを整理します。家財や第三者所有の設備まで、建物と一緒に扱えるとは限りません。

法務省は、土地・建物の信託目録に係る登記事項証明書の交付請求や、登記情報提供サービスでの確認を案内しています。どの資料をどの範囲で取得すればよいか分からないときは、司法書士等へ相談できます。登記資料だけで契約全体を判断せず、変更契約や関連書面も合わせて確認してください。

解体の理由を、受益者の利益と結び付けて整理する

受託者には、受益者のために忠実に事務を行う義務などがあります。解体したいという希望だけでなく、現在の傷み、維持費、利用状況、解体後の管理方法を資料にすると、信託の目的との関係を説明しやすくなります。

例えば、老朽化した貸家を解体して土地を管理する場合は、修繕して使い続ける案、今の状態で売却する案との違いも検討材料になります。受託者自身が土地を使いたい場合などは、利益相反、つまり関係者の利益が対立する問題がないかも法律専門家へ相談してください。

契約前に決める発注・連絡・支払いの役割

現地で業者に説明する家族、工事契約を結ぶ人、追加工事を承認する人が同じとは限りません。「窓口は娘、契約は受託者」という場合は、その違いを最初に伝えます。契約書の名義や受託者としての表示方法は、権限を確認した専門家と工事会社で整えましょう。

費用をどの財産から出すか、誰が支払手続きをするかも先に確認します。受託者個人のお金を立て替える場合も、後で当然に精算できると決めつけず、必要性と記録方法を相談します。見積書、契約書、請求書、支払いの記録が同じ工事に対応するように整理してください。

相談から工事完了までの流れ

  1. 対象を確認する:信託契約、変更書面、土地・建物の登記資料を集めます。
  2. 法律面を確認する:信託の目的と解体権限、必要な同意等、費用の扱いを弁護士・司法書士等へ相談します。
  3. 工事計画を具体化する:調査の権限を確認したうえで、現況写真と撤去範囲、見積りを準備します。
  4. 意思決定を記録する:必要な手続きと確認を済ませ、誰が何を決めたか残します。
  5. 契約と工程を確定する:発注者、支払い、追加工事の承認方法を共有します。
  6. 工事と引き渡しを行う:決定した範囲を撤去し、完成状態と残す物を確認します。
  7. 工事後の管理につなぐ:会計・報告用の書類と、登記や土地管理に必要な資料を担当者へ渡します。

見積りは、信託の対象と対象外を分ける

一つの敷地に母屋と物置があっても、同じ権利関係とは限りません。対象建物を図面に色分けし、塀・樹木・設備・家財をどこまで含むか示します。信託財産以外の物まで、ひとまとめに処分する契約にしないことが重要です。

見積り依頼の段階で未確認の部分があれば、「別の所有者の物置は対象外」「家財の処分は権限確認後に別途」など、条件を明記します。工事中に対象が増える場合は、現場の口頭指示だけで進めず、確認の手順に戻ってください。

金額に影響しやすい条件

  • 建物の構造・規模、隣家との距離、工事車両の出入り。
  • 信託対象と対象外が接しており、残す部分の保護や切り離しが必要か。
  • 家財・設備・付属建物の撤去範囲が確定しているか。
  • 事前調査、地中部分、整地や工事後の敷地管理をどこまで含めるか。
  • 手続きが整うまでの間に、立入防止などの暫定的な安全対策が必要か。

信託だから解体単価が一律に高くなるわけではありません。法律相談、登記、契約の確認等の費用は、工事費と分けて確認します。日程が未定なら見積りの有効期限と、再調査が必要になる条件も聞いておきましょう。

初心者が勘違いしやすいこと

家族全員の賛成があれば、契約の確認は不要?

家族の理解を得ることは役立ちますが、信託の権限や必要な手続きを置き換えるものではありません。誰の同意が、どの根拠で必要かを確認してください。

受託者名義だから、受託者個人の建物?

信託財産としての管理と、個人の財産の管理は区別します。工事費の記録も、受託者個人の別の工事と混ざらないように整理します。

信託があれば、成年後見の説明をそのまま使える?

信託と成年後見は別の制度です。ほかの制度の許可手続きをそのまま当てはめたり、信託ならすべての手続きが不要と考えたりせず、現在の契約と本人の状況に合った確認を行います。

現地調査で確認するポイント

  • 登記・契約にある建物と、現地の建物の位置・用途が一致しているか。
  • 増築部分や物置、第三者の家財・借用品がないか。
  • 居住者・借主など、利用している人がいないか。
  • 残す物を表示し、工事会社と写真で共有できるか。
  • 未調査の室内や地中部分がどこにあるか。
  • 工事後の立入防止、草木の管理等を誰へ引き継ぐか。

専門家と業者に聞いておきたい質問

  • 今回の解体は、信託の目的と受託者の権限に含まれますか。
  • 追加の同意や契約内容の確認が必要ですか。
  • 工事契約の名義と、支払いの記録はどう整理しますか。
  • 現場で追加撤去が必要になったとき、誰が判断しますか。
  • 工事会社には権限確認のため何を提示すればよいですか。
  • 工事後に必要な報告・登記等の担当者は誰ですか。

工事前チェックリスト

  • □ 最新の信託契約と変更書面を確認した。
  • □ 土地・建物の登記と信託目録を確認した。
  • □ 解体の権限と必要な同意等を専門家へ確認した。
  • □ 対象外の建物・家財・設備を区別した。
  • □ 発注者と追加工事の承認者を決めた。
  • □ 費用の出し方と証拠書類の保管方法を決めた。
  • □ 工事後の報告・登記・敷地管理の担当者を確認した。

よくある質問 FAQ

契約書が見つからない場合、登記の名前だけで進められますか?

まず契約に関与した専門家等へ確認し、必要な書面をそろえます。信託の内容が不明なまま、名義だけで発注できると判断しないでください。

解体業者に信託契約のすべてを渡しますか?

工事と権限確認に必要な情報を整理し、提示範囲を専門家と相談してください。工事と無関係な家族情報まで広く共有する必要はありません。

危険な状態でも確認が必要ですか?

危険な場所へ近づかず、市町村の担当窓口や法律専門家へ早く状況を伝えます。応急的な安全確保と、建物全体の解体の権限確認を分けて相談しましょう。

相談するときに用意すると良い資料

信託契約書と変更書面、土地・建物の登記資料と信託目録、現況写真、図面、建物を解体したい理由、使用者や家財の情報、希望時期を準備します。法律相談用の書面と、工事見積り用の資料を分けると整理しやすくなります。徳島に建物があり、受託者が県外に住む場合も、確認を取りまとめる連絡先を一つ決めておくと便利です。

まとめ

家族信託の建物は、契約の目的と権限、対象財産、費用の扱いを確認してから解体計画を確定します。受託者・法律専門家・工事会社の役割を整理し、意思決定から支払い、完了記録までつながる資料を残しましょう。

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参考情報・出典

確認日:2026年10月1日。個別の信託契約の解釈、権限、費用負担は、家族信託に詳しい弁護士・司法書士等へ確認してください。