2026年10月1日

家を壊す前に曳家を検討するには|建物を動かす条件と解体との費用比較

家を残しながら位置を変えたい場合は、解体前に、曳家の専門業者と建築士へ「建物・移動経路・移動先」をまとめて確認してもらいましょう。曳家は建物を壊さず移動する方法ですが、どの家でもできるわけではありません。

比べるのは、家を動かす作業だけの金額と解体費だけではなく、その後に使える状態になるまでの総費用です。残したい気持ち、使い方、予算を整理し、実現できる案を検討します。

曳家とは、建物をどのように残す方法?

曳家は「ひきや」と読みます。建物を支持し、全体の形を保ちながら別の位置へ移動させる工法です。敷地内で建物の位置をずらすなど、建物を残して土地の使い方を変えたいときに検討されます。

一度部材に解体して別の場所で組み立てる方法や、柱や建具だけを保存する方法とは異なります。何をどの程度残したいかによって、相談する方法が変わります。

国土交通省の公共事業の補償に関する説明でも、建物の構造や敷地などの条件に応じて曳家を検討する考え方が示されています。ただし、公共事業の補償基準と、ご自身で依頼する民間工事の見積りは同じものではありません。

相談に出てくる用語を整理

  • 曳家:建物の形を保って、位置を移す工法です。
  • 揚家:建物を持ち上げることです。位置を移す曳家と関連して行う場合もあります。
  • 仮受け:工事の途中で、建物を一時的な支持材などで支えることです。
  • 移築:建物を別の場所へ移すことを広く表す言葉です。どの工法かは別に確認します。
  • 再築・建て替え:今の建物を取り壊し、新たに建物を建てる案です。
  • 取合い:建物と基礎、配管、増築部分などが接する部分です。移動前後の処理を確認します。

なぜ解体契約の前に相談するのか

建物を残す可能性があるなら、構造や状態を調べる前に一部を壊したり、必要な設備を廃棄したりしないことが大切です。曳家を検討中であることを、解体の見積りを依頼する段階で伝えます。

移動先に十分な面積があっても、途中の経路が確保できない場合があります。反対に、移動は可能でも、新しい位置で希望どおり使うための建築上の条件を満たせるかは別の確認です。可能性を順番に絞ってから費用を比べましょう。

確認するのは「建物・経路・移動先」の3つ

建物自体を動かせる状態か

構造、重さ、形、増築部分とのつながり、劣化や補修歴を調べます。古いことだけで不可能とは限りませんが、移動に先立つ補強や、一部の取外しが必要になる場合があります。残したい部材や仕上げをどこまで維持できるかも確認します。

途中を通る空間と作業場所があるか

移動先までの距離だけでなく、曲がる必要があるか、門や塀、樹木、電線、隣家が支障しないかを調べます。装置や支持材を設置する場所、作業中の立入範囲も含めて計画します。

移動先で使い続けられるか

地盤、建物を支える基礎、隣地や道路との関係、用途を確認します。希望する向きや位置だけで決めず、設計者に法令上の条件と今後の使い方を確認してもらいましょう。移動後の雨水の流れや出入口の高さも検討します。

基礎・配管・外構の工事は別に整理

建物を移す場合も、移動先の基礎、既存基礎の扱い、電気・ガス・給排水の切離しと再接続を考える必要があります。玄関の段差、階段、犬走り、デッキなど、建物の周囲も新しい位置に合わせて検討します。

例えば、建物本体を残せても、以前の場所にある配管をそのまま使えるとは限りません。どこまでが曳家業者の仕事で、どこからが基礎・設備・外構の業者の仕事かを図面と見積りで区別します。

既存基礎の撤去だけを解体業者に依頼する場合も、建物が安全に移動・支持されたことを誰が確認し、いつ作業を引き継ぐか決めておきましょう。

建築の手続きは「同じ家だから不要」と決めない

建物を移す行為も、建築に関する手続きの確認が必要です。自治体の建築確認の案内では、曳家を含む移転が示されています。実際に必要な確認は、規模、区域、移す位置や計画などに応じて建築士と担当窓口へ相談します。

同じ敷地内か、別の敷地へ移すかでも確認すべき条件が変わり得ます。以前の確認済証や図面がある場合は持参してください。登録文化財などの場合は、その制度の手続きも別に確認します。

移動距離が短いことだけで手続きが不要とは言えません。申請や事前相談の担当者を決め、工事を始めてよい段階を工程表へ反映しましょう。

相談から工事・再使用までの流れ

  1. 家族で、残したい理由と移動後の使い方を整理する。
  2. 建物図面・敷地図・補修記録を集める。
  3. 曳家業者と建築士が、建物・経路・移動先を調査する。
  4. 建築条件と必要な補強・基礎・設備工事を整理する。
  5. 曳家案と解体・建て替え案を、同じ完成目標で見積もる。
  6. 方針を決め、手続きと担当業者間の工程を調整する。
  7. 専門業者が計画に従って移動・据付・復旧を行う。
  8. 建物と設備の確認、必要な検査等を済ませ、使用再開を確認する。

家財をどこまで出すか、工事中に立ち入れるか、仮住まいが必要かは工事計画によります。曳家なら住んだまま進められるという前提にせず、生活の切替えも打合せに入れてください。

見積り金額に影響しやすい条件

  • 建物の構造、重量、形状、増築部分の有無。
  • 移動距離、方向転換、地盤の高低差。
  • 移動に必要な補強・仮受け・作業装置。
  • 経路にある外構や設備の撤去・復旧。
  • 移動先の基礎と地盤に関する工事。
  • 設備の切離し・延長・再接続。
  • 移動後の補修、耐震・断熱等の改修。
  • 旧基礎の撤去、整地、仮住まい、家財保管。

移動後の改修を後回しにすると、比較時点では曳家案だけが安く見えることがあります。実際に使うために必要な工事と、希望で追加する工事を分けて、総費用を確認しましょう。

解体・建て替えと比較するときのそろえ方

曳家案では「移動+基礎+設備復旧+必要な改修+旧位置の整理」を確認します。建て替え案では「解体+新築+設備・外構+必要な付帯工事」を確認します。どちらも設計、手続き、引越し等を見落とさないことが大切です。

費用だけでなく、残る間取りや段差、今後の修繕、工事期間、思い入れのある空間を維持できるかも並べます。どちらかが常に安い、環境に良い、短期間で終わると一律には言えません。建物と敷地の条件に基づいて比較します。

初心者が勘違いしやすいこと

  • 「家を動かせれば、そのまま住める」:基礎・設備・補修・必要な確認を終える必要があります。
  • 「移動距離が短いので費用は小さい」:準備や支持、接続の工事も費用に含まれます。
  • 「古い家でも形が整っていれば大丈夫」:外観以外の構造と劣化を調査します。
  • 「曳家なら耐震性も自動的に上がる」:必要な診断や補強は別の確認です。
  • 「壊さないので廃材も解体工事も発生しない」:旧基礎や支障する外構などの撤去が必要な場合があります。

現地調査で確認するポイント

  • 基礎と建物の関係、床下や構造を調べられる範囲。
  • 雨漏り、腐朽、虫害、増改築などの履歴。
  • 移動先までの経路と、隣地に影響する範囲。
  • 電線・配管・樹木・門塀などの支障物。
  • 移動後の高さ、出入口、道路との関係。
  • 工事中の家財保管と、生活に必要な設備の停止期間。

専門業者へ聞いておきたい質問

  • この建物を動かせるか判断するために、追加で何を調べますか。
  • 残せる部分と取り外す部分はどこですか。
  • 移動先での建築条件を誰が確認しますか。
  • 基礎・設備・旧基礎撤去はどの見積りに含まれますか。
  • 移動中や据付後の不具合が判明したときは、どう対応しますか。
  • 使用再開の条件と、完了時に受け取る記録は何ですか。

工事前チェックリスト

  • □ 残したい理由と今後の使い方を共有した。
  • □ 建物・経路・移動先を一体で調査した。
  • □ 建築条件と必要手続きの担当を決めた。
  • □ 基礎・設備・外構を含む総費用を比べた。
  • □ 旧位置の基礎撤去と整地を確認した。
  • □ 家財と仮住まいの計画を立てた。
  • □ 業者間の引継ぎと使用再開の確認方法を決めた。

よくある質問 FAQ

少しだけ奥へ動かす場合も相談できますか?

移動距離が短い計画でも相談できます。ただし、専門業者の調査と建築上の確認が必要です。図面に希望位置を示して、実現性から確認してください。

図面がない古民家でも検討できますか?

図面がないことを伝えて相談します。現況の測定や追加調査が必要になる場合があります。過去の修理写真や増築時期のメモも役立ちます。

曳家できなければ、何も残せませんか?

建具や古材など一部を残す方法も検討できます。残したい物の場所・数量・使い道を整理し、解体業者と再利用先に相談してください。

相談するときに用意すると良い資料

  • 建物の平面図・構造図・確認済証等の手元資料。
  • 敷地図と、移動希望位置・経路を書き込んだ図。
  • 建物全体、床下等の既存写真、修理記録。
  • 電気・給排水・ガスなどの設備資料。
  • 残したい部材や仕上げの一覧。
  • 移動後の用途、予算、希望時期、仮住まいの可否。

まとめ

曳家は、家を残しながら位置を変える選択肢です。建物を動かせるか、経路を確保できるか、移動先で使えるかを確認し、必要な基礎・設備・改修まで含めて解体案と比べましょう。

フクブルへ解体をご相談の際も、曳家などの保存案と比較中であることをお伝えください。先に解体範囲を確定せず、保存側の専門家による判断と照らし合わせることが大切です。

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参考情報・出典

確認日:2026年10月1日。他自治体の案内・事例は制度や工法の理解に用いています。徳島の個別計画は、担当する建築士・専門業者・行政窓口へ確認してください。